【自己破産の準備その7】従業員の解雇
自己破産において、一番心苦しいことの1つが、従業員の解雇でしょう。
私の場合、破産手続きに入った年に創業以来初めて1名解雇しましたが、その時と同じくらい解雇は心苦しいものでした。
ただ、自己破産せずに続けていた方が、従業員にとっても不幸になると割り切り、解雇予告を出しました。
■解雇予告
Xデーを決めた後に、従業員に対して解雇予告を出しました。
本来であれば、書面で解雇予告を出すものですが、どの道、自己破産するので、口頭で解雇予告をしました。
解雇予告の際に伝えたことは、大きく分けると3つ。
- 申し訳ないということ。できれば、Xデーあたりまで働いて欲しいということ。
- 給料は、解雇予告手当を含め、Xデーより前の予め決めた日に支払うということ。
- 会社都合の解雇なので、失業保険が出るということ。また、その手続きの方法などバックアップはするということ。
反論が出ることも予想しましたが、みんな納得してくれ本当に感謝しています。この時ばかりは、心がグッとなりました。
※最後まで従業員が残ってくれる場合、通常業務はもちろんですが、不用品の処分や分別、そして掃除などを行ってもらった方が良いです。退社後は、経営者1人で全てやる必要があるので、ここでいかに強力してもらえるかが重要です。
■解雇予告手当
例えば11月末日に12月末日で解雇すると予告した場合、12月末日で解雇することができます。
また、即日解雇した場合、30日分以上の平均賃金の解雇予告手当を支払う必要があります。
では、11月15日に11月30日で解雇すると予告した場合はどうか。
本来であれば、15日不足なので、15日分以上の平均賃金の解雇予告手当も支払う必要があるのですが、Xデーが11月30日であれば、Xデー以降の分は不足とのことです。
※私の場合、解雇予告日まで従業員は働いてくれたので問題ありませんでした。
■社会保険の請求について
社会保険は、従業員からお金を徴収し、それに会社負担分を加えて年金事務所などに支払います。
自己破産する場合、滞納分があれば多額の金額、そうでなくても最後の月の社会保険費は納めてないことになります。
そこで気になることと言えば、従業員から徴収したお金。
従業員からすれば、支払った状態。でも年金事務所などからすれば、支払われていない状態なのです。
仮に、再度従業員に請求がいくのであれば、従業員に対して本当に申し訳ないなと私自身は思っていました。そして、それが自己破産する上の後ろめたさの1つでもありました。
しかし、この場合、従業員は支払ったことになるとのことです。これについては、安心の一言でした。
■従業員解雇時の給料の支払いは偏頗弁済に当たらない
Xデー直前に従業員を解雇した場合、本来であれば、最後の給料はXデー後になるため、偏頗弁済に当たるはずです。
しかし、従業員の給料については、優先権があるようで、退職時にまとめて支払っても偏頗弁済には当たらないと言われました。
債権者に従業員を入れると、自分も従業員も不幸になるので、従業員の給料分は確保した上で、自己破産するのが良いと私は思います。
※【自己破産の準備その7】に関しては、法律等が変わる恐れがあるので、弁護士に確認した方が良いと思います。
【自己破産の準備その6】Xデー前にやるべきこと
Xデーが決まったら、やるべきことがいくつかあります。
基本的に必要書類(破産申立についての同意書や委任状)は、依頼をする弁護士から指示があるので、それに従えば良いです。ここでは、事前に知っておいた方が良い補足内容を説明したいと思います。
■2ケ月分の家計簿
個人の自己破産において、2ケ月分の家計簿の提出を求められます。
所定の雛形があるので、それに金額を記入するのですが、記入する上で恐らくかなり困ると思います。何故なら、覚えていないから。
だから、自己破産をするなら、個人で支払ったものはレシートを残しておくなり、メモしておくなりした方が良いと思います。
ちなみに、家計簿の記入は、食費50,000円のように大雑把な記入で問題ありませんでした。
■解約できるものは解約する
Xデーの時点で未払いのある相手、また、Xデー以降に請求書が届く相手が債権者になります。
その債権者が多ければ多いほど面倒なことになり、また迷惑をかけることにもなるので、解約できるものは解約することをオススメします。
解約することにより、債権者にならないのであれば、解約するにこしたことはありません。
駐輪場とか新聞とか、仕事にあまり影響ないものを解約すると良いです。
※顧問弁護士や顧問税理士に対しては、破産する旨を伝え、債権者にならないような段階で、契約を解除してもらうのが得策です。
■一部の換価できる物は換金しておく
例えば、会社に湯沸かしポットがあるとしましょう。
自己破産をすれば、管財人がその湯沸かしポットを買取業者などに売却して換価します。
しかし、従業員がその湯沸かしポットを欲しいと言ったとしましょう。
この場合、従業員に適正な金額で売るのはOKです。適正な金額とは、2社の会社に見積もりを取り、その高い方の金額なら売ってもOKという意味。見積もり額が0円なら1円で売却します。
実務的には、ネットで買い取り額を検索して、その表示結果で売却すればOKでした。(そのページのキャプチャーを撮っておくと良い)
■個人の税金の支払いはしておく
Xデー前に、個人の税金(住民税など)の支払いはしても問題ありません。
むしろ、自己破産をしても税金は免責対象ではないので、支払いをしておいた方が良いです。
税金については、下記の偏頗弁済には当たらないので、滞納分があれば、真っ先に支払いましょう。
■クレジットカードのポイントは使っておく
法人個人問わず、クレジットカードのポイントが貯まっているはず。
自己破産をすると、クレジットカードは強制解約になり、それらのポイントは無効になります。
従って、Xデーより前にクレジットカードのポイントを使っておくのが良いでしょう。
ポイントで支払い額を減らしても構いませんが、ギフトカード等に交換しておくのが無難だと思います。
■偏頗弁済(へんぱべんさい)について
自己破産において、最大級のタブーと言えば、偏頗弁済。偏頗弁済に関しては、相談した各弁護士で見解が異なっており、今だにどこまでがセーフなのか分かりません。
ただ、Xデー前に最も気をつける内容が偏頗弁済だと思っています。
少なくとも、親からお金を100万円借りていて、Xデー直前に100万円返済することは偏頗弁済に当たります。
また、A社とB社に未払いがあり、A社のみに支払い、B社には支払わないというのも偏頗弁済に当たります。
但し、銀行口座から引き落とされてしまった場合は、不可抗力なので、偏頗弁済に当たりません。
※【自己破産の準備その6】に関しては、法律等が変わる恐れがあるので、弁護士に確認した方が良いと思います。
【自己破産の準備その5】Xデーの設定
自己破産をする場合、最も重要なのは、Xデーをいつにするかということ。
Xデーの定義は難しいものがありますが、ここでは自己破産申し立てをする直前の代理人弁護士に全て引き継ぐ日とします。
■Xデーは現金が一番ある日に設定すると良い
法人は、金額の多寡こそあれ、ほぼ毎日入金や出金があるものです。
中でも給料日は、従業員への給料の支払いのため出金が多い日。また、月末は入金も多いかもしれませんが、出金も多い日になることでしょう。
債権者リスト作成時に、どの日に多くの出金があるかまとめているはずなので、それを踏まえてXデーを決めます。
例えば、Xデーが月末の場合、その日の支払いはしなくて良いです。また、Xデーが月末の場合、25日の支払いとか20日の支払いなどをする必要はないとのことです。(催促の電話は受けるかもしれませんし、税金や社会保険関係は口座を差し押さえてくるので、それを考慮した上でどうするか決めた方が良いです。)
そういった感じで、Xデーを設定します。
当然、支払いをしなかった相手は、債権者になります。何だか騙しているみたいな感じがしますが、自己破産とはそういうものです。
【自己破産の準備その4】債権者リストの作成
自己破産をする上で、債権者リストが必要になります。
つまりは、こちらが債務を負っている相手の一覧表です。これについては、漏れが発生すると非常に面倒なことになるので、事前にリストを作成しておいた方が良いです。
※最初に弁護士に相談する時に、債権者リストが必要になるので、そこで作成します。
■債権者リスト作成において重要なこと
債権者リストは、経営者個人の債権者リストと法人の債権者リストの2つを作成します。
必要な情報は、債権者の正式名称(法人名もしくは個人名)、住所、電話番号。FAX番号もあれば記入します。金額は、おおよそ正しければ間違っていても問題ありません。
リース契約の相手の住所なんかは、毎月銀行口座から引き落としだったりするので、契約書を調べたりする必要があり、何気に確認作業が多かったりします。
また、○○株式会社が債権者だと思っていても、請求書を見ると○○株式会社の子会社だったみたいな場合もあるので、少し気を使う作業になります。(光熱費関係に関しては、本社ではなく管轄支社が債権者になるはずなので、気をつけてください)
※過去3ケ月くらいの通帳を見て、支払い漏れがないか確認するのが無難だと思います。漏れなく作成したと思っていても、実は漏れがあったという場合があるので、気を付けましょう。
【自己破産の準備その3】請求書や領収証などについて
法人の場合、請求書や領収証などについては、保管期間が定められています。
法人の規模にもよると思いますが、それらは紙で保管するとそれなりの量になります。これについては、自己破産と少し関係してくるので、対応できるようであれば、事前に対応した方が良いと思います。
■請求書や領収証の電子化の承認を受けておくべき
平成17年にe-電子法が施行され、税務署長の承認こそ必要になりますが、特定の書類は電子データ化が可能になりました。
この電子データ化(承認に3ケ月程度要した記憶あり)の承認を受けていれば、自己破産においては楽になります。
私の場合、自己破産を申請し管財人が付いた後、事務所の引き払いが行われました。
そこで問題になったのが、請求書や領収証など。
これって処分するの?それとも保管するの?って問題。保管期限は法律上、7年ですからね。
私が経営していた会社は、5年くらい前に電子データ化の申請をしていたので、難を逃れましたが、そうでなかったら、それらの書類の保管場所はどうすれば良かったのでしょうか。
考えただけでもゾッとします。従って、電子データ化は申請しておいた方が良いと思います。
【自己破産の準備その2】銀行口座の開設及び解約
自己破産をするなら、新しく開設する銀行口座と解約する銀行口座を決める必要があります。
特に、銀行口座の開設については、自己破産手続き後の生活に直結してくる内容なので、よく考えて手続きした方が良いでしょう。
■法人の銀行口座について
法人の銀行口座をいくつか保有していると思いますが、重要なのは、普段引き落としが発生しない銀行口座の有無です。
引き落としが発生しない銀行口座を1つ用意する
法人クレジットカードや各種引き落としなど、法人の銀行口座からはかなりの頻度で引き落としが発生します。
自己破産する上で、これらの引き落としは時に致命的な問題になる場合があるので、引き落としが発生しない安全な銀行口座を1つ準備するのがオススメです。
但し、借り入れをしている銀行の銀行口座は、残高を差し押さえられる恐れがあるので、全く関係ない銀行の口座にするのが良いでしょう。
※個人的には、ネットバンクが良いと思います。
あまり使っていない銀行口座は解約する
法人が自己破産する場合、最終的には銀行口座は管財人が解約します。
管財人の立場に立ってみれば、銀行口座が多ければ多いほど、仕事が増えるのです。
そのため、使っていない銀行口座は、解約するのがオススメ。もちろん、解約されていることが分かる通帳は残しておいてください。
※最終的には、引き落としがかかっている銀行口座、借り入れ先の銀行口座、引き落としが発生しない銀行口座以外は解約しておいた方が良いと思います。
■個人の銀行口座について
自己破産する上で、個人の銀行口座は少し厄介です。
使っていない銀行口座は解約した方が良い
子供の時に地元で開設した銀行口座、仕事をする上で雇用者から指定された銀行の口座、銀行員との付き合いで開設した銀行口座など、恐らく多くの人が数種類の銀行口座を持っていることだろうと思います。
特に、子供の時に地元で開設した銀行口座は、休眠口座になっていることでしょう。
しかし、自己破産する上では、休眠口座になっているなら、休眠口座であることを証明しなければいけません。
これが実に厄介。
私の場合もそうでしたが、地元の銀行の支店が近くになく、休眠口座の証明ができなかったのです。そのため、片道1時間くらいかけてその銀行の支店に行き、休眠口座を証明する用紙を発行してもらい、銀行口座を解約するということを行いました。
ゆうちょ銀行に至っては、口座番号すら分からず調べてもらったりもしました。
解約を含め、本当に手間がかかります。再スタートも兼ねて、使っていない銀行口座があれば、ついでに解約した方が良いでしょう。
デビットカード用の銀行口座を開設した方が良い
自己破産をする上で、困ることの1つがクレジットカードが持てないということ。
クレジットカードが使えないと何かと不便なことが多いため、デビットカードを持つのが良いと思います。
デビットカードであれば、借り入れ機能があるデビットカードを除き、審査はありません。もちろん、自己破産をしたとしても、強制的に解約になることはありません。
自己破産手続き中は、郵便物が管財人に転送されることを考慮すると、自己破産の手続きに入る前にデビットカード用の銀行口座を開設するのが合理的ではないでしょうか。
私の場合、デビットカードを事前に準備しておいて、本当に良かったと思っています。そのデビットカードは、ネットバンク系のものなのですが、入出金がコンビニのATMから手数料無料でできる点もありがたい限りです。
【自己破産の準備その1】通帳の準備
自己破産をする予定なら、真っ先に取り組んでおいた方が良いことがあります。それは、通帳の準備。
通帳の記帳具合によって、準備に時間がかかる場合があるので、注意が必要です。
■通帳は過去2年分の取引履歴が必要
自己破産において、自己破産する予定の日から過去2年分の通帳の入出金履歴が必要になります。
法人の銀行口座であれば、決算等があるため、必ず通帳は記帳するものですが、個人の銀行口座、とりわけ使う頻度が低い銀行口座については、記帳し忘れている場合があるはず。
記帳し忘れていた場合、一定期間だったか一定件数以上の履歴になると、おまとめ記入(合計記帳)されてしまいます。
おまとめ記入状態では、自己破産の手続きに入れないため、必ずその期間の明細が必要になるのですが、その明細の入手がかなり厄介。
銀行によるので一概には言えませんが、入手するのに10日程度と1,000円程度のコストがかかります。
費用は安価なのでどうでも良いですが、日数がかかるため、自己破産を検討しているのであれば、過去2年分の通帳の記帳は真っ先に済ませた方が良いと思います。
※私の場合、期限ギリギリで準備したため、少し危なかったです。